岬洋介シリーズ読む順番は?
中山七里さんの小説「さよならドビュッシー」岬洋介シリーズの読む順番まとめ。
①さよならドビュッシー
②おやすみラフマニノフ
③いつまでもショパン
④どこかでベートーヴェン
⑤もういちどベートーヴェン
⑥合唱 岬洋介の帰還
⑦おわかれはモーツァルト
⑧いまこそガーシュウィン
最新刊は「いまこそガーシュウィン」。
単行本が2023年9月15日発売。
文庫最新刊は「おわかれはモーツァルト」。
2023年12月6日発売。
岬洋介シリーズあらすじは?
①さよならドビュッシー
祖父と従姉妹とともに火事に遭い、全身大火傷の大怪我を負いながらも、ピアニストになることを誓う遥。コンクール優勝を目指して猛レッスンに励むが、不吉な出来事が次々と起こり、ついに殺人事件まで発生する……。
②おやすみラフマニノフ
秋の演奏会を控え、第一ヴァイオリンの主席奏者である音大生の晶は初音とともに、プロへの切符をつかむために練習に励む。しかし完全密室で保管される、時価2億円のチェロ、ストラディバリウスが盗まれた。彼らの身にも不可解な事件が次々と起こり……。ラフマニノフの名曲とともに明かされる驚愕の真実!美しい音楽描写と緻密なトリックが奇跡的に融合した人気の音楽ミステリー。
③いつまでもショパン
難聴を患いながらも、世界的なピアノコンクール「ショパン・コンクール」に出場するため、ポーランドに向かったピアニスト・岬洋介。しかし、ショパン・コンクールの会場で殺人事件が発生。遺体は手の指10本がすべて切り取られるという奇怪なものだった。岬は鋭い洞察力で殺害現場を検証していく!
④どこかでベートーヴェン
加茂北高校音楽科に転入した岬洋介は、その卓越したピアノ演奏でたちまちクラスの面々を魅了する。しかしその才能は羨望と妬みをも集め、クラスメイトの岩倉にいじめられていた岬は、岩倉が他殺体で見つかったことで殺人の容疑をかけられる。憎悪を向けられる岬は自らの嫌疑を晴らすため、級友の鷹村とともに“最初の事件”に立ち向かう。その最中、岬のピアニスト人生を左右する悲運が……。
⑤もういちどベートーヴェン
2006年。法曹界入りした天生高春は、ピアノ経験者のようだがなぜかクラシック音楽を避ける岬洋介とともに、検察庁の実務研修を受けていた。修習の一環として立ち会った取り調べの場に現れたのは、絵本作家の夫を刺殺したとして送検されてきた絵本画家の牧部日美子。日美子は犯行を否認しているが、凶器に付着した指紋という動かぬ証拠が存在する。取り調べが打ち切られようとしたそのとき、岬が突如ある疑問を投げかける……。
⑥合唱 岬洋介の帰還
天才ピアニスト・岬洋介が旧友の危機を救うため、地球の裏側から急遽駆けつける。そして悪徳弁護士や熱血刑事、死体好きな法医学者たちと相まみえ……。フジテレビ系連続ドラマ「悪魔の弁護士 御子柴礼司」や連続ドラマW「ヒポクラテスの誓い」などドラマ化もされた人気キャラクターたちが集結!
⑦おわかれはモーツァルト
2016年11月。盲目ながら2010年のショパンコンクールで2位を受賞したピアニスト・榊場隆平はクラシック界の話題を独占し人気を集めていた。しかし、「榊場の盲目は、自身の付加価値を上げるための芝居ではないか」と絡んでいたフリーライターが銃殺され、榊場が犯人として疑われてしまう。事件は深夜、照明の落ちた室内で起きた。そんな状況下で殺人ができるのは、容疑者のうち、生来暗闇の中で暮らしてきた榊場だけだと警察は言うのだ。窮地に追いやられた榊場だったが、そんな彼のもとに、榊場と同様ショパンコンクールのファイナルに名を連ねたあの男が駆けつける――! 累計160万部突破の『さよならドビュッシー』シリーズ最新刊。
⑧いまこそガーシュウィン
アメリカで指折りのピアニスト、エドワードは、大統領選挙の影響で人種差別が激化し、変貌しつつある国を憂い、音楽で何かできないか模索していた。
そこで、3カ月後に予定しているカーネギーホールでのコンサートで、黒人音楽を愛した作曲家、ジョージ・ガーシュウィンの名曲「ラプソディ・イン・ブルー」を弾くことを思い立つ。
しかし、マネージャーがガーシュウィンでは客を呼べないと反対したため、ショパン・コンクール中に演奏で人命を救い、一躍有名になった男、岬洋介との共演を取り付けることにした。
一方、新大統領の暗殺計画を進めていた〈愛国者〉は、依頼主の男から思わ提案をされー一。
音楽の殿堂、カーネギーホールで流れるのは、憎しみ合う血か、感動の涙か。どんでん返しの帝王が放つ、累計168万部突破の音楽シリーズ最新刊!
岬陽介シリーズについて
岬洋介シリーズは中山七里さんのミステリー小説「さよならドビュッシー」から始まります。
岬先生はシリーズを通じて登場しますが、主役ではありません。主人公の家庭教師、先生、コンテスタントと立場は違いますが、主人公にとって多大な影響を及ぼす人物です。
ベートーヴェンを冠した2作品では岬洋介の過去が描かれています。突破性難聴になった高校時代、司法修習生時代の物語です。
「さよならドビュッシー」を書いていた時代は「のだめカンタービレ」がブームだったという著者のエピソードにもあるように、物語の核心には音楽への情熱があります。
ミステリー小説なので謎解き要素が売りではありますが、クラシック音楽を文字で丁寧に描写していくスタイルや、主人公たち音楽関係者の不安や希望を赤裸々に描いている部分も魅力です。
そして何より、岬先生のクールに見えて熱いところが魅力です。
岬陽介シリーズの映画とドラマ
2013年に映画化。
映画のキャストは香月遥役に橋本愛さん。岬洋介役に清塚信也さん。
2016年に日本テレビ系金曜ロードSHOW! 特別ドラマ企画にてドラマ版化。
ドラマのキャストは香月遥役に黒島結菜さん。岬洋介役に東出昌大さん。
岬陽介シリーズの読書感想
①さよならドビュッシー
さよならドビュッシーはミステリー小説ですが、ピアノにすべてを注ぐ主人公とそれを応援する岬洋介の師弟関係が最大の魅力に感じました。
岬先生は自身が法曹畑から音楽畑への転向という事情もあって、音楽に情熱を抱いているのであればOKというフェアなスタンスが読んでいて心地良いです。
映画化もされているのでそっちも見てみました。
映画版では主人公にとっては少しだけマシな未来がある形で終わります。個人的には小説の終わり方の方が好きでした。
主人公の正体がバレる理由についても原作と改変がありました。映画版の理由だと全身の包帯を取ったら家族なら誰でも気づくのではないかなと個人的には思いました。
よくよく振り返ってみるとトリックそのものに無理があるかな・・・とも思うところはあります。ただ、そのことでこの作品の評価が下がることもないです。
ピアノで繋がる師弟関係、岬先生の献身は何度読んでも心打たれるものがあります。
②おやすみラフマニノフ
愛知音楽大学に通う音大生の城戸晶が主人公。
彼の視点で語られる音大生の苦悩や不安。城戸晶は貧乏学生でアルバイトをしながら練習をするというハードな毎日を送っています。
学費の工面で精いっぱいになり音楽から心が離れていく彼が岬先生と出会い、情熱を取り戻していく過程が見どころ。
推理小説のトリックとしては前作と同じくツッコミどころ満載ですが、岬先生と音大生の個性的なメンバーの魅力があるので最後まで楽しく読むことができました。
親子関係に関する岬先生ならではのクールなアドバイスが印象的でした。
③いつまでもショパン
ポーランドのショパン国際コンクールが舞台。
主人公はポーランドの音楽家ヤン・ステファンス18歳。音楽一家の期待の星として母国ポーランドに優勝をもたらすという使命を背負っています。
岬先生もコンテスタントとして参加。ヤンと岬先生のやり取りも本作の見どころ。
「おやすみラフマニノフ」ではやや出番が少なめだっただけに岬先生の描写が多いというだけで、本作が好きになってしまいます。
残忍なテロ描写。「音楽は武器」だと話した岬先生の真意など考えさせられる点も多いです。
推理小説として見ても強引過ぎることはないので良かったのかなと思います。
前作の城戸晶や「さよならドビュッシー」の主人公のその後が描かれる点もファンとしては嬉しいサプライズでした。
④どこかでベートーヴェン
岬先生の高校生時代を描いた作品。
クラスのみんなを助けたと思ったら殺人容疑をかけられるという展開はなかなかスリリングで面白い展開でした。
岬先生のファンとしては辛いところですが、やはり突発性難聴になってしまった理由には興味がありました。そういった点を含めて学生時代の岬洋介に触れられるこの作品は満足度が高い作品でした。
殺人トリックについても違和感なく最後まで読めたので、推理小説としても面白かったです。
⑤もういちどベートーヴェン
岬先生の司法研修生時代の話。
天生高春のちょっと意地悪なサプライズと研修先での事件がきっかけになって岬先生が自分を徐々に取り戻していく過程が秀逸でした。
特に後半は決意を固めて吹っ切れた感じが出ていて、読んでいるこちらも爽快な気分になります。
もういちどベートーヴェンから始めるという強い意志。
ワルトシュタインという難曲への挑戦は23歳まで音楽から離れてしまった彼の決意が見て取れました。
推理小説としてのトリックは割とあっさりしていましたが、今作には「自分を偽らない」という明確なテーマが一貫していていたので最後まで読みごたえがありました。
⑥合唱 岬洋介の帰還
渡部・古手川のコンビから始まり、岬陽介、御子柴弁護士、犬養刑事、光崎教授とシリーズの主役が勢ぞろい。
いつになったら岬先生が出てくるんだと思いながら読んでたら半分読み終わっていて笑ってしまいました。
「いつまでもショパン」から6年後の世界ですが、岬先生は相変わらずで安心しました。
天生高春を始め「もういちどベートーヴェン」のその後の話としても興味深かったですね。
犯人は予想通りの人物だったので、推理小説として見ると大味に感じました。
とはいえ、それを吹き飛ばす夢の競演で一気読みしてしまいました。
⑦おわかれはモーツァルト
「いつまでもショパン」に登場したピアニスト・榊場隆平を巡る事件。
物語の構成が「合唱 岬洋介の帰還」に似ていて、岬先生の登場がやや遅いのは残念でした。
ただ、それだけにストーリー後半は楽しく読むことができたので良しとしたいところです。
この作品にも心に残るセリフがありました。
「嫉妬の別名は憧憬です。憧れるのは嫌いじゃありません。第一、他人を呪ったところで自分の特になることなんて一つもないです」
音楽の描写だけでなく、岬先生の何気ない一言に勇気を貰えるところも、このシリーズの醍醐味の一つだと私は思います。
次回作、「いまこそガーシュイン」にも期待です。